Ibuki

日本が好き。だから海外で勝負する – Ibuki Kuramochi

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“日本が好き。だから海外で勝負する”

印象深い眼差しでIbukiさんはつぶやくように答えた。
記者が「アメリカにいて一番日本を思い出すことってなんですか?」という質問をした時のIbukiさんの仕草、表情、眼差しは1時間弱のインタビューの中では異彩な印象だった。

「叔母と旅に行ったのです」思い出すかのように遠い眼差しでIbukiさんは語り始めた。

「伊豆旅行へ行ったのですが、夜に薪能を観覧しました。川の上に能のステージを組み、周りを薪で取り囲む。
水と、火の霊性たちに囲まれる中、能の”土蜘蛛”を観覧しました。その空気感はとても神秘的なもので、観覧しながら、目で、心で踊っていました。あの夜のことは決して忘れることが出来ません。
ああいう日本独自の幽玄の世界観。自分のアートを通して、海外という場で、そういった日本独自のものを表現していきたいと思っています。」

1990年、暦では夏の終わりだがまだまだ残暑の頃に群馬県で彼女は生まれる。
自然豊かな山野で有名日本アニメが表現するような精神世界を肌で理解し、頭で感じていた。

しかしその感性が確固たるアートの目標をつかんだのは生まれた場所ではなく、2002年に古都・奈良で観た平山郁夫(日本画家)の絵画、シルクロードだったのだ。

「まるでぼんやりしていた景色がいきなりピントが合ったような、観ているようで観ていなかった眼球が急に目の前の景色を認識したような衝撃でした。あまりの衝撃で、それが一体何だったのか、私はすぐにそれを見失い、またハッキリとしない、漠然とした、”芸術家になりたい” という思いだけが心に強く残ったのでした」
その後芸術家を志す気持ちを維持しつつ、Ibukiさんは東京へ進出。

2015年には再び古都・奈良を訪れ有名な寺院である薬師寺にて13枚の壁画で表現される「大唐西域壁画」を観覧する。
「49メートルもの大きさ、30年という年月には死のモチーフと生の魂を感じます。この作品を私は懐古感をもって受け容れていました。そして今後自分も同じような魂を作品に封じ込めていきたいと願いました」

平山郁夫氏以外に影響を受けたものやアーティスト、または音楽はありますかという質問に
「高校生の頃はいわゆるサブカルチャーと言われるような漫画などに興味を持っていました。
つげ義春さんや丸尾末広さんの漫画など。音楽はメタルミュージックにハマっていた時もあります。
それらの持つアンダーグラウンドの反骨精神というか、そういったものに惹かれていたんだと思います。
影響を受けたアーティストと言われると、ウィリアム・ブレイクやビアズリー、川鍋暁斎など」

森羅万象に精神を感じ、それを書や舞踏に表現を求めるIbukiさん。
ライブペイントや墨絵に固有の呼び方はありますかと問えば、
「特に呼び方や希望はありません。あくまでも“表現”の一つ、作品の一つなのです」

日本固有の神道と母親がその血液から母乳を生み出す、深紅から白、白色は始まりを表し生を表す。
その対極にある黒はすべての終わりと死を表現している。

生と死。そしてそれを生み出すエロティシズム。人生を生まれて死ぬまでの間として、それを表現するIbukiさんのパフォーマンスは1時間が限界という。
凝縮された人生とは意外とそれくらいの時間で表現されてしまうのかもしれない。

パフォーマンス時の心境を語るIBUKI

今、アメリカにいて、興味があって生き様を調べている人がいるという。
「アジア人として初のハリウッド女優として活躍した”アンナ・メイ・ウォン”には非常に強い関心を持ちます。彼女の写真から、美しい凛とした強い意志が感じられる。自身のレース(人種)に誇りを持ってして戦おうという強い意志が。常に特別でユニークであり続けるということなど」
その時代の逆流に生きた女性達にIbukiさんは強く惹かれているようだ。

世界中で公演し、そのパフォーマンスを惜しむことなく披露し作品を増やすIbukiさん。その活動は常に都会で有り、人々の海で行われることが多い。

ミュージシャン、ダンサー、モデル、書家などコラボするアーティストも多く、その作品に魂を凝縮させ無限の広がりとその終演を表現する彼女は、しかし常にその心に孤独を抱き続けている。

パリでの公演前には移動中の電車の中で日本の演歌が頭の中で流れたらしい。
「雪に埋もれた番屋の隅で、わたしゃ夜通し飯を炊く、という歌詞で石狩挽歌という歌なんです。
その歌をパリの景色の中で口ずさんだときに、なんて表現、なんて深い心情なんだろうと思って。
日本固有の感情とその表現。”我慢”や”噛みしめる”ことに美を投影させる表現は日本独自のものだと思います。
これらの心情をパフォーマンスへ投影させていきたい。世界から見て独特とされる文化が多い日本だと思いますが、そんな日本が大好きなんです」

カリフォルニアの明るい日差しの中彼女の前身が纏うオーラは、一瞬だが氷結を感じるのもだった。
それは彼女の涼しげな笑顔が成すものだっただろうか。彼女の今後の活躍から目が離せない。


Ibuki Kuramochi
幼い頃に見た平山郁夫氏のシルクロードシリーズに感銘を受け、画家を志すようになる。
‘原生体とエロティシズム’を主軸テーマとし様々な形態で作品を制作。
日本的美意識や宗教観を投影する作品たちは艶かしさを持ち合わせた“線”によって創造される。
無と在、死と生、無機物と有機物ーモノクロームで描かれた世界の中にはこれら“無常”の意識が投影されている。

シドニーやイタリアでの展示後、2016年はフランス・ジャパンエキスポにてパフォーマンス出演・三味線や書道とコラボし、ソロのパフォーマンス含め6ステージを成功させる。
ライブペイントと舞踏を掛け合わせた舞踏ペイントをパフォーマンスに取り入れ、2017年4月はパリにてパフォーマンスツアー、個展も同時開催。
2017年9月には台湾・台北市内のLittle MOCAギャラリーにて個展を開催。

その他タイツのオリジナルデザイン、舞台美術、シュージックビデオ出演等一定の枠に留まることなく彼女のアート世界を広げている。画家であり、パフォーマーであり、様々な表現を貫く、マルチアーティスト。

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Posted by Meg